今回紹介するのは、パイナップル果実で成熟後期に発生し貯蔵性を低下させる生理障害「ウォーターコア」の分子基盤を、比較プロテオミクスで追究した研究です。研究ではデータ非依存型取得(DIA)によるLC–MS/MSを用い、抵抗性系統“35-1”と感受性系統“29-3”の比較、さらに健全な“Paris”と発症した“Paris”果肉の比較を実施しました。
抵抗性“35-1”対感受性“29-3”では、差次的発現タンパク質(DEPs)や系統特異タンパク質(SEPs)が細胞壁、分泌小胞、アポプラストに富み、細胞壁の緩み、ホルモン応答、イソフラボノイドおよびファルネシル二リン酸生合成に関与する機能が強調されました。一方、健全対発症“Paris”では、リボソーム小サブユニット生合成に関わるタンパク質群が富み、tRNA合成、チューブリン生合成、炭水化物代謝を司る中心的ネットワークが示唆されました。両比較で一部のタンパク質に重なりが見られ、抵抗性“35-1”および健全“Paris”ではフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、ラフィノース合成酵素、エクスパンシン、マンナン加水分解酵素などのストレス応答・細胞壁改変関連タンパク質が蓄積し、感受性“29-3”や発症“Paris”ではアルコール脱水素酵素、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸酸化酵素、低酸素誘導タンパク質などのストレス応答タンパク質が顕著でした。これらの知見は、ウォーターコアの抵抗性・感受性に関わる候補タンパク質群を提示し、抵抗性系統育成や障害制御の分子的基盤を提供します。

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