
今回紹介するのは、ヒトとイヌの乳がん細胞株を横断的に比較したプロテオミクス研究です。非腫瘍性の184B5、ルミナルAのMCF-7、トリプルネガティブのMDA-MB-231という3種のヒト細胞株と、トリプルネガティブのイヌ細胞株CMT-U27とIPC-366を対象に、LC–MS/MSで網羅的解析を実施。種をまたぐオルソログに着目して721個のオルソログたんぱく質を同定し、脂質機能・恒常性に関連する分子群を重点的に評価しています。
主な結果として、4つの腫瘍細胞株を非腫瘍性184B5と比較した際、約22%のオルソログたんぱく質が少なくとも30%の有意な増減を示しました。さらに、種差に依らずトリプルネガティブ表現型に特異的な変動が約14%で認められました。KEGGおよびMetascapeによる機能解析では、増殖、膜トラフィッキング、脂質代謝に関わる経路の攪乱がヒト・イヌの双方で示され、脂質ダイナミクスに結びつく共通の分子基盤が浮かび上がっています。これらの所見は、イヌを腫瘍学の比較モデルとして活用し、診断・モニタリングのバイオマーカーや治療標的候補を探る上での有用性を後押しするものです。

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