今回紹介するのは、急性メタンフェタミン投与がシナプス蛋白質に与える変化を、ラット背側線条体のシナプトニューロソーム(SN)を用いて深く掘り下げたディスカバリー型プロテオミクス研究です。著者らはTMTラベリング、オフライン高pH分画、低pHナノフローLCを組み合わせ、高分解能Orbitrap質量分析(HRMS)で測定しました(Evosepの使用記載はありません)。わずか約500 ngのSN消化物から約6100の細胞質および膜タンパク質を同定し、背側線条体SNとしてはこれまでで最も包括的なプロテームを実現しています。
メタンフェタミン投与1時間後と生理食塩水対照を比較すると、合計147タンパク質が有意に変動(増加81、減少66)し、ドーパミン生合成、シナプス小胞サイクリング、ミトコンドリアエネルギー代謝、プロテアソーム分解といった経路に富むことが示されました。これらはメタンフェタミンに応答した線条体シナプスの分子リモデリングを示唆し、特に小胞酸性化、ミトコンドリアATP供給、プロテアソーム機能を検証可能な経路レベルの標的として提案します。深層・低入力SNプロテオミクスの有用性を示し、依存症研究における新たな分子標的同定の足場を提供する結果です。

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