今回紹介するのは、液体クロマトグラフィーを使わずに単回注入でプロテオーム・メタボローム・リピドームを同時解析する「SMAD(Single-Injection Multi-Omics Analysis by Direct Infusion)」です。従来は個別のLC-MSが必要でスループットとコストが課題でしたが、本手法はダイレクトインフュージョンとイオンモビリティ質量分析、さらに自作ソフトウェアを組み合わせ、単一サンプルから5分未満で9,000超のメタボライトm/z特徴量と1,300超のタンパク質を定量します。液体クロマトグラフィーを用いないため、Evosep等のLCシステムも不要です。
妥当性は3つのケーススタディで検証され、マウスマクロファージのM1/M2分極や細胞老化、人由来細胞での小規模ドラッグスクリーニング、そして96ウェルプレートを用いた哺乳類細胞の大規模ハイスループット薬剤スクリーニングに適用されました。さらに、機械学習によりプロテオームとメタボロームの関係性を同定し検証しています。短時間・低コストで同一試料から多層オミクスを取得できる点は、大規模スクリーニングや系統的薬剤応答解析の拡張に直結する実用的な前進と言えます。

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