
今回紹介するのは、増殖糖尿病網膜症(PDR)に関連する分子シグネチャーを明らかにした研究です。この研究では、糖尿病網膜症の発症における重要なタンパク質と代謝物の影響を調査するため、増殖糖尿病網膜症患者8名と非糖尿病性の特発性黄斑円孔(iMH)を持つ対照者6名から未希釈の硝子体液サンプルを収集しました。研究者たちは、TMTタグを用いた定量プロテオミクスと非標的メタボロミクス解析を統合し、バイオインフォマティクス手法(PCA、差次的発現、PPIネットワーク、OPLS-DA、経路エンリッチメント)を用いて解析を進めました。主要な結果はELISAと免疫組織化学によって検証されました。
研究の結果、PDRにおいて7つの主要なタンパク質と6つの主要な代謝物が有意に異常調節されていることが明らかになりました。特に、糖尿病網膜症群の硝子体および網膜神経線維層では、CD5Lの発現が上昇し、CLUとSERPINF1(PEDF)が低下していました。これらの分子は「補体および凝固カスケード」や「プリオン病」といった経路に共にエンリッチされており、異常な血管透過性、炎症反応、微小血栓症の共通のメカニズムを示唆しています。また、クレアチン代謝の乱れはAMPK関連のエネルギー調節不全を示唆し、CD5Lとミクログリアの相互作用はその神経炎症調節機能を強調しています。これらの発見は、診断や精密な介入のための新たなバイオマーカーおよび治療標的を提供する可能性があります。
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