今回紹介するのは、グリオブラストーマ(GBM)に対する標準薬テモゾロミド(TMZ)が投与後早期に引き起こす細胞内応答を多層オミクスで横断的に捉えた研究です。RNAシーケンスと定量LC–MS/MSを組み合わせ、曝露後72時間以内の遺伝子発現、新生タンパク質翻訳、定常タンパク質量、キナーゼ基質レベルのリン酸化パターン、さらにMHC-Iペプチド提示(免疫ペプチドーム)までを一体的にプロファイルしました。
解析の結果、DNA損傷シグナリングとp53関連ストレス経路が迅速に活性化し、タンパク質合成や抗原提示が動的に変化することが判明しました。特にTMZ治療関連ペプチド抗原(TAPA)群を同定し、ストレス応答由来のペプチドやリン酸化MHC-Iペプチド、放射線など他の遺伝毒性処置でも誘導されるペプチドを含むこと、さらにその一部が再発GBM患者腫瘍でも検出されることを示しました。これらの知見は、TMZが適応的かつ潜在的に耐性につながるストレスプログラムを早期に作動させる一方で、腫瘍の免疫可視性を高めうることを示唆し、TMZと免疫認識を強化する治療との併用に適した時間的“窓”の存在を示すとともに、遺伝毒性治療が腫瘍免疫原性をどう変えるかを解剖する汎用的フレームワークを提示しています。

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