今回紹介するのは、膵管腺癌(PDAC)の線維化進行を時間分解で捉え、線維化と治療反応性を制御する新たな共標的としてnidogen-2(NID2)を特定した研究です。転移性の高いKPCと低いKPflCのマウス腫瘍および野生型を、発症初期(約50日)、中期(約90日)、後期(約200日)に採取し、ISDoTによる脱細胞化でマトリックスを濃縮、DIA LC-MS/MSで網羅解析しました。その結果、NID2が特に中期のKPC腫瘍で増加していることが明らかになりました。
機能検証では、CAFに対するNID2のCRISPRiにより、3Dオルガノタイピック基質の線維化がSHGイメージングやピクロシリウスレッド/複屈折解析で低下し、がん細胞の浸潤も抑制されました。さらに、サブキュタネアスおよびオルソトピック共移植では腫瘍増殖と線維化が抑えられ、インタービタル蛍光量子ドットによる観察で血管開存性が改善、ゲムシタビン/ナブパクリタキセルへの反応性も向上しました。肝転移の減少と生存期間の延長も認められ、NID2がPDACにおける線維化と治療反応を調節する間質性の有望な共標的であることが示唆されます。なお、質量分析はデータインディペンデント取得(DIA)によるLC-MS/MSで行われています。

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