本研究は、Orbitrapベースの質量分析計を用いて、前駆体の動的範囲を拡張する新たな手法「複数蓄積前駆体質量分析法(MAP-MS)」を提案しています。従来のOrbitrapの欠点であるスキャン速度の遅さを克服するために、選択されたイオンモニタリング法を改良し、複数の前駆体m/z範囲を単一スキャンにマルチプレックスすることで、前駆体スペクトルの動的範囲をほぼ2倍に向上させることが可能となりました。この手法は、ソフトウェアやハードウェアの改造を必要とせず、他のOrbitrap測定を行っている間に追加のイオン蓄積ステップを隠すことができます。
主な結果として、データ依存取得(DDA)およびデータ非依存取得(DIA)を用いて、前駆体の定量化が向上し、DIAではペプチド検出のために前駆体およびタンデム質量スペクトルを組み合わせることで最大11%の検出向上が得られました。
- MAP-MSにより、Orbitrapの動的範囲がほぼ2倍に向上。
- DDAでは高品質な測定による前駆体定量化の改善が確認。
- DIAにおいては、前駆体とタンデム質量スペクトルの組み合わせで検出感度が向上。
技術メモ
- MS機種: Orbitrap
- LC法: 不明
- 取得モード: DDA, DIA
- 前処理: 不明
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