単一細胞質量分析(MS)は、細胞のプロテオームを高感度でプロファイリングする手法ですが、高度な機器のコストが普及の障壁となっています。本研究では、キャピラリー電気泳動(CE)とデータ依存型取得(DDA)、および電気泳動相関(Eco)イオンソーティングを組み合わせ、AI支援のスペクトルデコンボリューションを行う「Real-Time Eco-AI」ワークフローを提案しました。このワークフローは、レガシーのハイブリッド四重極オービトラップ質量分析計(Q Exactive Plus)にカスタムビルドのCEプラットフォームを接続して実施されました。
この手法により、1 ngのHeLa消化物から2142のタンパク質を同定し、現代のnanoLC Orbitrap Fusion Lumosで検出された969のタンパク質を上回る結果が得られました。また、約250 pg(単一細胞相当)からも1799のタンパク質を15分未満で同定し、理論的には1日あたり48サンプルのスループットを達成しました。さらに、Xenopus laevisの胚において、神経系と表皮系の運命指定におけるプロテオームの非対称性を明らかにしました。この結果は、CE-MSを用いた単一細胞プロテオミクスにおけるコスト効果の高い強力な戦略としてのReal-Time Eco-AIの有用性を示しています。
- Real-Time Eco-AIは、CEとDDAを組み合わせた新しい単一細胞プロテオミクス手法である。
- Q Exactive Plusを用いた実験で、1 ngのサンプルから2142のタンパク質を同定。
- 単一細胞相当の250 pgからも1799のタンパク質を迅速に同定し、理論的なスループットは48サンプル/日。
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