妊娠抑うつとSRI治療の胎盤蛋白質発現

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出典:論文ページ

今回紹介するのは、妊娠中の抑うつと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)治療がヒト胎盤のタンパク質発現に与える影響を調べた定量プロテオミクス研究です。妊娠第2三半期に登録された82名を対象に、Hamilton Depression Rating Scale(HAM-D)で評価したうえで、非抑うつ、抑うつ・非SRI治療、抑うつ・SRI治療の3群に分類。胎盤組織に対してショットガンLC-MS/MSを用い、差次的発現解析とオーバーリプレゼンテーション解析を実施しました。

抑うつ・非SRI治療群と健常群の比較では、抗酸化酵素や多様なSASP関連因子の増加とヒストンの減少が見られ、胎盤のセネセンスを示唆するパターンが観察されました。さらに、血小板活性化・脱顆粒、凝固カスケード、アミロイド線維形成に関与するタンパク質のアップレギュレーションも明らかになりました。一方で、抑うつ・SRI治療群を抑うつ・非治療群と比較すると、いくつかのタンパク質でダウンレギュレーションが認められました。無作為化が難しい母体メンタルヘルス研究において、胎盤という鍵器官のプロテオームを介して抑うつそのものの影響と薬物治療の影響を切り分ける端緒を示した点が意義深く、妊娠中の抑うつ管理のリスク・ベネフィットを考える基礎情報を提供します。

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