
今回紹介するのは、乳酸代謝に由来する新規エピジェネティック修飾「ラクトイル化」が消化器系腫瘍で果たす役割を総説したレビューです。ヒストンおよび非ヒストン蛋白質のラクトイル化(例:H3K9la、H3K18la)を介してクロマチンアクセスビリティを変え、転写プログラムを活性化することで、腫瘍進展、代謝リプログラミング、免疫回避、化学療法耐性を駆動するという知見が、食道がん、胃がん、大腸がん、肝細胞がん、膵がん、胆嚢がんにわたり整理されています。代謝—エピジェネティクスのクロストークを軸に、がん関連シグナリングのエピジェネティック制御という観点から最新動向を俯瞰しています。
本レビューは、ラクトイル化を標的とするバイオマーカーや治療標的、薬理学的介入戦略の可能性をまとめる一方で、検出法の標準化と臨床的有効性の検証が未解決の課題であることを強調します。こうした機構解明は消化器がん生物学の理解を深め、新たな治療標的の地平を開くものであり、今後は腫瘍免疫療法やプレシジョンメディシンにおけるラクトイル化の関与解読が、早期診断と個別化治療に向けた具体的指針を与えるとしています。

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