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    単一細胞空間プロテオミクス用微小反応器試料調製

    今回紹介するのは、上向き圧カタパルト型レーザー微小切除(LCM)とLC–MS/MSによる空間プロテオミクスのための新しい前処理ワークフローMR-SP2(Microreactor-based Sample Preparation for Spatial Proteomics)です。FFPEマウス腎臓で定義領域を狙ってLCM回収し、マイクロリアクター内でのワンポット溶液内処理により吸着ロスを最小化、さらにEvotipディスポーザブルプレカラムを用いたピペット操作不要の移送を組み込むことで、回収から前処理、導入までを一貫化しています(Evosep本体の使用有無は抄録では不明)。

    結果として、約22細胞相当の50,000 μm3ではタンパク質同定数が3,381 ± 80にわずかに向上(対照3,174 ± 59)し、入力が少ないほど優位性が拡大しました。5–6細胞相当の12,500 μm3では1,145 ± 188(対照302 ± 126)、1–2細胞相当の3,125 μm3では695 ± 112(対照206 ± 51)と、少数細胞FFPE試料で同定深度を最大約3倍に改善。MR-SP2は上向き圧カタパルト型LCMに適合した堅牢な前処理を提供し、単一細胞スケールの空間プロテオミクスにおける同定率と再現性の向上に寄与します。

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    痛風関節炎の甲状腺ホルモンAMPKタウリン代謝軸

    今回紹介するのは、急性痛風性関節炎(AGA)から慢性痛風性関節炎(CGA)への移行期に焦点を当て、血清の高深度データ非依存型取得(DIA)プロテオミクスと非標的メタボロミクスを統合した多層オミクス研究です。健常者(n=28)、AGA(n=31)、CGA(n=14)を対象に差次的発現解析を行い、尿酸排泄の制御因子ZBTB20や炎症・免疫関連のGUCY1A2、CNDP1、LYZ、SERPINA5、GSNを含む、持続的に破綻する中核タンパク質9種を同定しました。さらに、診断的価値をもつ一貫した変動を示すコア代謝物11種を見出し、性ホルモンや甲状腺ホルモン、腸内細菌由来代謝物に加え、環境曝露や栄養要因の攪乱が示唆されました。

    多オミクスのKEGG濃縮解析では、甲状腺ホルモン合成、AMPKシグナル、タウリン/ホスホタウリン代謝が中心経路として浮上し、相関ネットワーク解析からはAGAの急性免疫活性化がCGAの慢性炎症へと推移する免疫不均衡が明確化されました。これらの結果は、甲状腺ホルモン–AMPK–タウリン代謝軸の協調的な破綻と免疫微小環境のリモデリングがCGAの進展に関連することを示し、早期診断指標や標的型介入の有望な分子標的を提示します。

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    マウス血液由来小型細胞外小胞分離の改良

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    今回紹介するのは、マウスモデルの非終末採血から得た微量の血液を用いて、小型細胞外小胞(sEV)の回収法を比較・最適化した研究です。著者らはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と超遠心後のヨージックスノール密度勾配(UC-IDG)を、血清と血漿の双方を出発材料として評価し、ナノ粒子追跡解析、電子顕微鏡観察、そしてHPLC-MS/MSプロテオミクスで収量・純度・EVタンパク質内容を検証しました。

    結果として、SECはUC-IDGに比べてより多くの小胞とEV関連マーカーを回収し、同時に血中に豊富な非特異タンパク質の混入が少ないことが示されました。さらに出発材料としては血清より血漿の方がバックグラウンドがクリーンで、タンパク質凝集体も少ないことが確認され、下流のバイオマーカ探索に有利です。本研究は、前臨床の縦断試験に適した非終末採血という制約下でも、SECを用いた血漿由来sEV分離が高い収量と純度を両立しうることを示し、神経系疾患を含む疾患バイオマーカー開発に資する実用的なプロトコールを提示しています。なお、プロテオミクス解析はHPLC-MS/MSで行われていますが、特定のMS機種やLCメソッド、Evosepの使用についての言及はありません。

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    バイオ製造DIAプロテオミクス装置比較

    今回紹介するのは、DIAプロテオミクスをバイオマニュファクチャリングの探索からプロセス管理まで位置づけることを目指し、複数価格帯のプラットフォームを横断比較した研究です。既存のシャーシ微生物である大腸菌K-12と、耐塩性のHalomonas bluephagenesis sp. TD01を対象に、1:2および2:1の混合比で作製したモデル試料を5種のLC-MSシステムで解析しました。timsTOF HT、Exploris 480、ZenoTOF 7600、Select Series MRTのデータはDIANNとMSstatsで、VionのデータはSkyline経由でMSstatsで処理し、DIA条件での実用的な性能を評価しています。

    全サンプル合算で8,222タンパク質(大腸菌4,401、Halomonas 3,821)を同定し、1% FDRでの定量では、timsTOF HTとExploris 480がそれぞれ約5.5千および約5千と広いカバレッジを示し、ZenoTOF 7600が約3.5千、Waters Select Series MRTが約1.3千、レガシー機のWaters Vionが約850という結果でした。いずれの装置でもシャーシ生物のコア代謝経路を構成するタンパク質群を定量でき、プラットフォーム間でカバレッジに差はあるものの、代謝経路のモニタリングと生産プロセスに向けた操作可能性の評価に十分な情報が得られることを示しています。これにより、DIAプロテオミクスをバイオマニュファクチャリングのプロセス理解・制御に実装する際の現実的な選択肢が整理されました。

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    血管疾患の細胞機序探索技術

    今回紹介するのは、血管疾患の細胞・分子機構を解き明かすための新技術を俯瞰したレビューです。従来の画像診断や臨床検査では捉えきれない細胞レベルのダイナミクスに対し、本稿はシングルセル・空間トランスクリプトミクス、超解像・光音響イメージング、マイクロ流体オルガンオンチップ、CRISPR/Cas9、オプトジェネティクス、そしてAIを取り上げ、臨床応用への準備状況や限界、活用可能性を評価しています。統合的なシングルセル/マルチオミクスにより、疾患を駆動する細胞集団や遺伝子プログラムを高解像度で特定でき、オプトジェネティクスとオルガンオンチップは制御可能で生理学的に近いモデル化を可能にします。さらにAIは大規模データの統合、リスク予測、解釈性の向上に寄与し、バイオマーカー探索や疾患モデリング、治療開発を後押しします。

    著者らは、臨床実装へ向けた次の一歩として、多施設・大規模検証、アッセイ手順の標準化、臨床データセットやヒト検体との統合を優先すべきだと強調します。プロテオミクスを含むマルチオミクスと計算モデルは疾患の複雑性解明に有望であり、規制科学の進展やデジタルツインなどのデジタルシミュレーションがトランスレーションを加速しうるという見通しが示されています。

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    血漿プロテオミクス結核診断予後指標

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    今回紹介するのは、血漿プロテオミクスを用いて活動性結核(ATB)、潜在性結核感染(LTBI)、非結核性抗酸菌症(NTM)を分子レベルで弁別し、併せて病勢進行や治療応答に関わるバイオマーカーを探索した研究です。ラベルフリー定量によりATB、LTBI、NTM、治癒後患者(CP)、健常者(HD)の5群の血漿を解析し、FC>1.5または<0.67、P<0.05で差次的発現タンパク質(DEP)を抽出、GO/KEGG、STRINGネットワーク、Mfuzz動的クラスタリングで特徴付けました。測定の信頼性はPearson相関、ペプチド分布、分子量分布などの多面的QCで確認し、標的タンパク質についてはELISAで群間の発現を評価しています。

    その結果、5コホート合計で1,338種の非冗長タンパク質を同定し、ATB・LTBI・NTMの3比較で計142種のDEPを見出しました。これらは主に細胞外領域に局在し、ATB–LTBIではA2MやIL-1R2など炎症応答、TGM3やKRT3など上皮バリア機能に富む27種、ATB–NTMでは免疫グロブリン軽鎖(IGLV2–11)や自然免疫エフェクター(S100A8)を含む69種が特徴的でした。NTM–LTBIでも46種のDEPが検出され、これらのパネルはATB/LTBI/NTMの分子学的鑑別系の構築に資するとともに、病態進行や治療反応性の評価に向けた候補バイオマーカー群を提示しています。

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    病原性SHP2変異の相互作用局在変化

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    今回紹介するのは、SHP2(PTPN11)の病原性ミスセンス変異が細胞内でどのように相互作用や局在を変えるのかを、近接標識プロテオミクスで体系的に描いた研究です。自己阻害を外して活性化する変異だけでなく、触媒活性を高めない変異も含め、野生型、臨床的に関連の高い10種の変異体、さらに自己阻害状態を安定化する阻害剤結合型SHP2を並列に解析し、各状態でのインタラクトームをマップ化しました。

    その結果、相互作用ネットワークは変異や阻害剤の有無に依存して大きく組み替わり、いくつかの変異では細胞内局在自体が変化することが判明しました。特に一部の変異体はミトコンドリアへの局在が増加し、ミトコンドリア機能にまで影響を及ぼす兆候が示されました。本研究はSHP2シグナル伝達の理解に資する有用なリソースを提供するとともに、近接標識プロテオミクスがミスセンス変異に伴う相互作用や局在の変化を捉える有効な手段であることを示しています。

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    組織別MSC細胞外小胞の卵巣予備能低下治療比較

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    今回紹介するのは、間葉系幹細胞(MSC)由来の細胞外小胞(EV)の組織由来による違いが、卵巣機能低下(DOR)にどう影響するかを比較した研究です。シクロホスファミド誘導DORマウスモデルで、脂肪組織由来(A‑EV)と臍帯由来(U‑EV)を投与し、プロテオミクス解析で両者のタンパク質組成の差を確認しました。結果として、A‑EVとU‑EVはいずれも血清AMHの上昇と受胎能の改善をもたらしましたが、U‑EVはより持続的な生殖上のベネフィットを示しました。

    単一細胞RNAシーケンスとin vitro機能検証では、EV治療が顆粒膜細胞のアポトーシス、酸化ストレス、DNA損傷応答、老化シグネチャーを低減することが示され、なかでもU‑EVはより広範な調節効果を発揮しました。総じて、両EVはDORの卵巣機能改善に有効である一方、U‑EVは長期的な受胎能の回復と顆粒膜細胞の老化抑制で優位性を示し、臨床応用に向けた有望性が示唆されます。なお、MS機種名やLCメソッド、Evosepの使用有無は本抄録からは特定できません。

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    臨床血漿プロテオミクス用ペプチド標準

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    今回紹介するのは、血清・血漿プロテオミクスの機種間移行性と再現性を底上げするために設計されたオープンな内部標準「Charité Open Peptide Standard for Plasma Proteomics(OSPP)」です。OSPPは、広範な血清・血漿データに基づき選抜した211本の同位体標識ペプチドからなり、濃度を揃えて調製され、ターゲット型/アンターゲット型のいずれのMSワークフローにも利用可能とされています。著者らは、血清に加えてEDTA、クエン酸、ヘパリン採血の血漿でも、複数のLC–MSプラットフォームを跨いで一貫した定量が得られることを示し、技術的な堅牢性とプラットフォーム間の整合性を実証しました。

    技術的基準で選ばれたにもかかわらず、これらのペプチドは多様な生物学的機能をもつタンパク質を代表し、日常の臨床検査項目やFDA承認薬の標的も含むため、拡張可能な臨床マーカーパネルとしても位置づけられます。COVID-19入院コホートへの適用では、分析性能の向上、プラットフォーム間でのデータアライメント、疾患層別化やバイオマーカー探索に資することが示されました。OSPPは、血漿・血清プロテオミクスの精度と再現性を高めつつ、機種横断での比較可能性を確保するための実用的な基盤を提供します。

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    細胞外小胞ペプチドミクス子宮内膜癌サブタイプ分類

    今回紹介するのは、血漿中の細胞外小胞(EV)に含まれるペプチドームを、MALDI-TOF質量分析とLC-MS/MSで可視化し、機械学習と統合して子宮体がん(EC)の迅速なスクリーニングと分子サブタイプ判定を実現する最小侵襲アプローチです。EC患者と対照からEVを分離し、MALDI-TOFの指紋情報にLC-MS/MSペプチドミクス、さらにCA125とHE4、がんリスクに関わる臨床情報を加えて学習させたところ、ECと対照の識別でAUC 0.867を達成。分子サブタイプ(POLE変異、NSMP、MMRd、p53異常)の多クラス分類でもmicro/macro平均AUCは0.91/0.90と高精度でした。

    LC-MS/MSでは7,479種類のペプチドを同定し、サブタイプ特異的な指標としてFGA(フィブリノゲンα鎖)、PRSS3、APOA1が浮上しました。MALDI-TOFによる高スループットな指紋解析と、LC-MS/MSの深い同定力を併用することで、侵襲的な組織生検や時間のかかるゲノム解析への依存を下げつつ、EC管理に資する低コストでトランスレーショナルなプラットフォームを提示しています。なお、MS機種名やLCメソッドの詳細は抄録では明記されていません。

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