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    イネ南方黒すじ萎縮病抵抗性とOsJAR2

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    今回紹介するのは、白背飛蝗が媒介する南方型稲黒条矮化ウイルス(SRBSDV)抵抗性の分子基盤を、GWASとマルチオミクスで解き明かした研究です。195系統の国際多様性集団をスクリーニングして、SRBSDVとRBSDVの二重抵抗性を示し、発病率を0%にまで抑える高度抵抗性品種R91を同定。接種5日後にはR91でジャスモン酸(JA)とJA-Ileが増加し、2,000超の防御関連遺伝子が一斉に誘導されたのに対し、感受性系統ではJA/JA-Ileが低下し防御応答が抑制されました。時系列共発現ネットワーク解析から、JA-Ile合成酵素をコードするOsJAR2(LOC_Os01g12160)が抵抗性ネットワークのハブとして浮上しました。

    さらに、GWASでOsJAR2と共局在する新規QTL qSRBSDV1-1を特定し、ハプロタイプ解析によりOsJAR2が候補原因遺伝子であることを遺伝学的に裏づけました。本研究は、迅速なJA生合成活性化と協調的な防御遺伝子発現がR91の抵抗性基盤であることを示し、OsJAR2の抵抗性ハプロタイプを利用したマーカー選抜(MAS)の実装可能性を提示します。高度抵抗性資源R91の提供とあわせ、抵抗性機構の理解とエリート耐病性イネ育種に直結する遺伝学的ツールキットを提供する意義は大きいと言えます。

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    血漿プロテオミクス肺癌シグネチャー

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    今回紹介するのは、血漿プロテオームを多面的に計測し、説明可能AI(XAI)で特徴選択と解釈を行うことで、肺がんの分子的シグネチャーを同定した研究です。490例の肺がん患者と124例の年齢・喫煙歴などをマッチさせた対照から、データ非依存型取得の質量分析(DIA-MS)とProximity Extension Assay(PEA)を組み合わせて解析し、機械学習モデルで肺がんを予測しました。その結果、AUROCはDIA-MSで0.91(95%CI: 0.88–0.93)、PEAで0.97(95%CI: 0.92–0.98)を達成。XAIによりモデルと一貫して寄与する特徴のネットワークが可視化され、感染や炎症応答に関連する分子群が中心的であることが示されました。

    さらにDNAアプタマーを用いたプロテオミクス法を導入し、プラットフォームをまたいで整合するコンコーダンス・パネルを策定。このパネルはDIA-MSとPEAの双方でAUROC 0.88(95%CI: 0.80–0.90 および 0.81–0.95)を示し、測定法が異なっても再現性の高い識別能を持つことが示唆されました。これらの結果は、DIA-MSと抗体ベース/アプタマー計測を統合し、XAIで特徴を絞り込む戦略が、LDCTを補完し得る血漿バイオマーカー群の頑健な同定に有用であることを示しています。なお、使用MS機種やLCメソッド、Evosepの有無は抄録では特定されていません。

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    動物疾患バイオマーカー探索技術

    今回紹介するのは、家畜や伴侶動物の疾病診断におけるバイオマーカーを総覧したレビューです。診断・予後・予測の各バイオマーカーを仕組みから整理し、臨床症状が遅発的・非特異的になりがちな動物医療で、分子指標が果たす役割を明確化しています。技術面では、ハイスループット・オミクスが中核で、プロテオミクスではLC-MS/MSやDIGE、メタボロミクスではNMRやLC-MS/MS、さらにゲノミクスのNGSやRNA-Seqが疾患特異的シグネチャーの発見に寄与すると述べています。加えて、CRISPR/Cas9、AI強化画像解析、アプタマー型バイオセンサー、マイクロ流体デバイスなどの新興技術が診断応用のポテンシャルを示すことが示されています。

    実装例として、イヌ悪性黒色腫、牛呼吸器病複合(BRDC)、イヌの先天性門脈体循環シャントの症例が取り上げられ、分子指標が病態把握や早期検出に資する可能性が示されています。一方で標準化の不足、種差によるばらつき、臨床実装への移行の難しさといった課題も正面から指摘。総じて、本レビューはバイオマーカーの作用機序の理解と、LC-MS/MSを含む先端解析基盤の統合が、獣医診断の精度向上と疾病制御の前進に不可欠であると結論づけています。

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    大腸癌フェロトーシス統合オミクス解析

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    今回紹介するのは、大腸がん細胞HCT-116をモデルに、レドックスプロテオミクスにリピドミクスとメタボロミクスを統合して、フェロトーシスの分子機構を解き明かそうとする研究です。フェロトーシスは脂質過酸化とROSの蓄積を特徴とし、システインのチオール基が可逆的な酸化(ジスルフィド結合形成や酸化修飾)によって“レドックススイッチ”として働く点に着目。著者らは、このチオールの酸化状態変化を捉えるレドックスプロテオミクスと、脂質種や代謝物の変動を測るリピドミクス/メタボロミクスを組み合わせ、CRCにおけるフェロトーシス関連の新規タンパク質・脂質・代謝物の同定を目指しています。

    抄録の抜粋では具体的な結果の詳細は示されていませんが、この多層オミクス戦略により、フェロトーシスの開始・伝播・抵抗性に関与するレドックス制御要素の可視化が期待されます。得られる知見は、従来治療の効果を高めうるフェロトーシス制御の理解を進め、CRCのバイオマーカーや新たな治療標的候補の発見につながる可能性があります。なお、使用MS機種やLCメソッド、Evosepの有無についての記載は抄録にはありません。

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    大腸癌血清代謝診断指標マルチオミクス検証

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    今回紹介するのは、血清メタボロミクスに基づく大腸がん(CRC)の非侵襲的診断バイオマーカーを大規模コホートで探索し、cfDNAメチル化との統合で検証した研究です。715例(CRC 248例、非がん対照467例)の血清を液体クロマトグラフィー–質量分析(LC-MS)で非標的解析し、統計的フィルタリングと多変量解析で差異代謝物を抽出、経路富化解析で生物学的解釈を付与しました。さらに、SVM、Random Forest、XGBoost、ロジスティック回帰で予測モデルを構築し、サブセットではcfDNAメチル化プロファイルも取得して、メタボライトとエピゲノム特徴を統合したマルチオミクス分類器を作成しています。

    結果としてCRC関連の血清代謝物26種を同定し、一次胆汁酸生合成やタウリン/ヒポタウリン代謝の破綻が明らかになり、宿主–腸内細菌代謝軸のリプログラミングが示唆されました。10種のメタボライトからなる診断モデルは、複数の機械学習手法でAUROC 0.96–0.97、正確度最大92.5%と高い識別能を示し、cfDNAメチル化マーカーを加えた統合モデルはAUROC 0.98へとわずかに性能向上しましたが、メタボロミクス単独でも十分に高性能でした。血清に基づく最小侵襲での高精度診断に向けて、有望な分子シグネチャと実装可能性の高いモデルを提示した点が本研究の意義です。

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    血漿プロテオミクスのライブラリ深度と測定時間

    今回紹介するのは、血漿プロテオミクスにおけるDIA解析の要であるスペクトルライブラリー構築を再検討した研究です。著者らはtimsTOF HT上でion mobilityを組み合わせたdiaPASEFを用い、高スループット測定において測定時間、ライブラリーの深さ、タンパク質・ペプチド同定数の関係を系統的に評価しました。DIA解析が実験由来またはインシリコ由来のライブラリーに依存するという前提のもと、血漿に特化したライブラリー構築アプローチを比較しています。

    主な結果として、ライブラリー構築に投じる測定時間が増えるほど同定数が増加することが確認されました。タンパク質レベルでは、最も包括的な実験ライブラリーに対してインシリコライブラリーは深さが劣り、ペプチドレベルでは実験ライブラリーがインシリコに比べて同定数を14%増加させました。ペプチド中心の解析が広がる現在、実験ライブラリーはより深い評価を可能にし、高スループット血漿プロテオミクスにおいて測定時間を投資する価値があることを示しています。

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    半月体形成性糸球体腎炎尿中バイオマーカー

    今回紹介するのは、急速進行性の腎機能低下を伴う半月体形成性糸球体腎炎(CrGN)の非侵襲バイオマーカーを、尿プロテオミクスで探索した研究です。北京協和病院で2022年5月〜2023年4月に腎生検で確定したCrGN(半月体>50%、I型1例・II型3例・III型11例)と、年齢をそろえた非半月体性腎炎、急性腎障害(AKI)、健常対照を登録し、LC-MS/MSで差次的発現タンパク質を同定、Ingenuity Pathway Analysisとプロテオームマップで経路・鍵分子を解析し、ELISAで検証しています。尿プロテオミクスの有望な枠組みとしてDIAの可能性も言及されています。

    計137例(プロテオミクス55例、検証82例、男性42.3%、平均48歳)の解析で、CrGNでは好中球脱顆粒と補体カスケードが上位経路として特異的に強調され、腎炎や健常群では同様の所見はみられませんでした。AKIとの比較ではneddylation経路の活性化が示されました。3群の差次的発現タンパク質を統合すると、CrGNに関連する8分子が抽出され、凝固第V因子(F5)、フォスフォリピド転送タンパク質(PLTP)、アルコール脱水素酵素1C(ADH1C)が有力候補に挙がりました。検証コホートのELISAでは、尿中クレアチニンで補正したF5とPLTPのCrGN予測能のAUCがそれぞれ0.831と0.780(いずれもP<0.001)と良好で、腎生検が困難な状況での補助診断バイオマーカー候補となる可能性が示されています。

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    単一細胞プロテオームトランスクリプトーム同時解析

    今回紹介するのは、同一の単一細胞からトランスクリプトームとプロテオームを同時に取得できる高スループット・マルチオミクス基盤nanoSPINSです。核となる工夫は、遠心力を用いたナノリットルスケールの「スピン・トランスファー」で、mRNAを含む液滴だけを二つのマイクロアレイ間で確実に移送し、タンパク質は初期プラットフォーム上に保持する点。これにより、RNAはRNA-seqで、タンパク質は同一細胞由来の画分を用いた等張性ラベル(TMTpro)LC–MSプロテオミクスで解析可能となり、同一細胞での統合解析を実現しています。

    二つの細胞株でのベンチマークでは、得られた網羅的プロテオーム/トランスクリプトームのプロファイルが既存手法と良好に整合し、TMTproによる多重化が単一細胞プロテオミクスのスループットを大幅に押し上げました。これにより、mRNAとタンパク質の両層で分子特徴を同定できるだけでなく、サンプル数の拡大によってクラスタリングや差次的発現・存在量解析の統計的検出力が向上。多様な細胞集団の特性解明に資する、実用性の高い単一細胞マルチオミクス・プラットフォームとしての有用性が示されています。

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    特徴量不要プロテオミクス用DIA転移学習

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    今回紹介するのは、DIAプロテオミクス向けのオープンソース検索フレームワークalphaDIAです。膨大化するMSデータに対し、統計的厳密さ・透明性・性能を両立することを目指し、クロマトグラフィー由来の特徴抽出に依存しない“feature-free”同定アルゴリズムを採用。生データ信号に直接機械学習を施すことで、特にtime-of-flight型質量分析計で得られるパターン検出に適しており、ベンチマークでは同定数と定量精度で競合手法に匹敵する性能を示しました。

    さらに、経験的ライブラリにも対応しつつ、完全予測ライブラリを用いる「DIAトランスファーラーニング」という探索戦略を提案。装置・実験ごとの特性を予測する深層学習モデルを継続的に最適化することで、機種・条件に依存せず、任意の翻訳後修飾に対して汎用的なDIA解析を可能にします。alphaDIAはローカルおよびクラウドで高性能に動作し、コミュニティがアクセスしやすい基盤としてDIA解析の裾野を広げます。

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    乳児てんかん性スパズム症候群ACTH治療応答指標

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    今回紹介するのは、乳児てんかん性スパズム症候群(IESS)に対する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)治療の奏効性を左右する分子マーカーを、血漿DIAプロテオミクスで探索した研究です。IESS 60例をACTH有効(EF、n=30)と無効(IEF、n=30)に層別し、年齢・性別をマッチさせた健常対照40例と比較。データ非依存型取得(DIA)で差次的発現タンパク質を同定し、GO/KEGGで機能注釈、ROC解析で予測マーカーを評価し、ELISAで結果を検証しています。

    EF群に特異的なタンパク質が114種見いだされ、体液性免疫調節、貪食、補体・凝固カスケード、代謝関連経路の関与が示唆されました。特にC8β、プラスミノーゲン(PLG)、ハプトグロビン(HP)、アルドラーゼA(ALDOA)、コラーゲンXVIII α1(COL18A1)の5種はACTH奏効予測に有望で、各々のAUCが0.8超。ELISAでもEF群でC8βとPLGが高く、HP、ALDOA、COL18A1が低いことが再現され、DIAの傾向と一致しました。本研究は、IESSにおけるACTH反応性の分子基盤の一端を明らかにし、血漿バイオマーカーによる治療効果予測や患者層別化に向けた手がかりを提供します。

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