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    オービトラップアストラルズーム試作機の定量評価

    今回紹介するのは、改良型の Orbitrap Astral Zoom 質量分析計(プロトタイプ)の性能を標準の Orbitrap Astral MS と直接比較評価した研究です。多様な取得法とサンプル量にまたがって、プロトタイプは前駆体およびタンパク質同定数、イオンビーム利用効率、定量精度のいずれでも上回りました。装置間を公平に比べるため、信号強度(任意単位)をイオン/秒へ換算するイオン校正フレームワークを導入し、このベンチマークによりプロトタイプはペプチドあたりのサンプリングイオン数が元の Orbitrap Astral MS より23.1%多いことが示されました。このイオン取り込みの向上が感度と定量精度の改善に直結しています。

    さらに、DIA(data-independent acquisition)プロテオミクスでの実用性を高めるため、Skyline のドキュメントグリッドに、溶出ピーク頂点で測定されたイオン数やピーク積分範囲内の総イオン数を報告する新指標を追加し、各アナライトごとの「検出イオン数」に基づく汎用的な性能評価枠組みを提示しました。総じて、Orbitrap Astral Zoom プロトタイプはDIA解析における高性能プラットフォームであり、同定数を超えた定量的ベンチマークを可能にする点が意義といえます。なお、LCメソッド名やEvosepの使用に関する記載はありません。

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    多重ナノ粒子タンパク質コロナ血漿プロテオミクス

    今回紹介するのは、ナノ粒子(NP)のプロテインコロナを用いて血漿中のダイナミックレンジを圧縮し、MSでの検出深度を高めるProteograph Product Suiteの定量性能評価です。著者らはマルチスペシーズのスパイクインを用い、フォールドチェンジの正確性、線形性、精密さ、定量下限(LLOQ)を複数のMSプラットフォームで検証しました。その結果、Orbitrap Astral MSと組み合わせたProteograph XTアッセイで血漿タンパク質を7,000種超同定し、深度面での優位性を示しています。

    混合種の希釈実験ではフォールドチェンジの正確性を維持しつつ、同一誤差閾値でNeat plasmaワークフローの3.5倍多くのタンパク質を定量しました。Orbitrap Exploris 480 MSでも同様の定量精度が得られ、異なるプロテオーム背景の影響も受けにくいことが示されています。さらに、10万検体超を支え得る4つのNPバッチ間で、タンパク質強度のCV増加はわずか4%にとどまり、スケール化に耐える再現性を実証しました。これらの結果は、Proteograph Product Suiteが深いカバレッジと定量の正確性・精密さを両立し、集団規模の血漿プロテオミクスやバイオマーカー探索を後押しする基盤となり得ることを示します。

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    間葉系幹細胞クローン別細胞外小胞活性と臨床可能性

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    今回紹介するのは、間葉系間質細胞(MSC)由来の細胞外小胞(EV)の治療効果が、MSCのクローン特性に左右されることを示した研究です。著者らは不死化したMSCクローンY201とY202を用い、超遠心でEVを回収し、ナノサイズ解析と超微細形態解析、ウェスタンブロット、質量分析プロテオミクスおよびmiRNAスクリーニングで特徴づけました。機能評価はERK1/2リン酸化、増殖およびT細胞極性化アッセイに加え、炎症性疾患のin vivoモデル2種で実施しています。

    両クローンのEVは形態的には類似でしたが、Y201由来EVはEVバイオマーカー、miRNA、プロテオーム含量が豊富でした。計算解析によりY201 EVのプロテオームにはマトリックス関連タンパク質が有意に富み、RGD配列を持つフィブロネクチンやMFG-E8が多い“EVコロナ”の存在が示唆され、ウェスタンで確認されています。機能的には、Y201 EVのみが関節軟骨細胞の増殖を用量依存的に促進し、その効果は少なくとも一部がRGD(インテグリン)–FAK–ERK1/2経路を介していました。両EVサブセットは活性化T細胞の増殖指数を低下させましたが、炎症性疾患モデルにおける疾患活動性の抑制はY201 EVに限られました。これらの結果は、MSCのクローン性がEVの分子組成と生理活性を規定し、特にマトリックス由来のコロナが作用機序に関与することを示すもので、クローン選択とEV製剤の分子特性評価が臨床開発の鍵となることを示唆します。

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    小児結核性髄膜炎髄液プロテオーム解析

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    今回紹介するのは、小児結核性髄膜炎(TBM)の髄液プロテオームを網羅的に解析し、他の中枢神経感染症と識別するバイオマーカーパネルを探索した研究です。後方視的に104例の髄液を解析し、TBM 7例、化膿性髄膜炎(PM)28例、ウイルス性髄膜炎(VM)20例、クリプトコッカス髄膜炎(CNM)9例、非中枢神経感染コントロール30例、脳疾患コントロール10例を比較しました。

    TBMのプロテオームはPMにより近似しており、TBM髄液では120種のサイトカインおよび受容体が有意に変動していました。経路解析では補体活性化、フィブリン血栓形成、マイクロオートファジーのシグナルが亢進し、コラーゲン分解が抑制されていました。診断的には、TBMとPMの識別にF2とTYMP(AUC=0.874)、TBMとVMにENPP2とWARS1(AUC=0.929)、TBMとクリプトコッカス髄膜炎にF12・APOM・CD163(AUC=0.993)、TBMと非感染コントロールにHLA-BとMGAT1(AUC=0.934)のパネルが有望と示されました。本研究は小児TBMの病態理解に資するプロテオミクス資源を提供し、鑑別診断や治療標的候補の提示に寄与します。なお、質量分析機種やLC条件、Evosepの使用有無は抄録からは不明です。

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    単一細胞質量分析画像化と顕微鏡の統合

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    今回紹介するのは、単一細胞レベルでの空間生物学に向けて、MALDI-MSIと顕微鏡観察を同一試料・同一座標で結びつける新しい手法です。従来は共登録の精度や解像度の不足がボトルネックでしたが、本研究はMALDIイオン化源内での明視野および蛍光顕微鏡観察を組み込み、同一細胞について脂質・代謝プロファイルと形態、さらにはタンパク質発現(蛍光)を同時に扱える(サブ)細胞スケールの解析を可能にしました。LC分離を介さないMALDI-MSIの強みを保ちつつ、顕微鏡像との継ぎ目のない統合で、単一細胞の多層的情報を一枚の空間地図に重ね合わせる設計が特徴です。

    応用例として、培養細胞と組織を対象に、貪食過程にあるマクロファージ内の脂質分布を可視化し、また腫瘍浸潤好中球それぞれの微小環境に相関した脂質プロファイルの不均一性を示しています。これにより、形態学的特徴や蛍光指標となるタンパク質発現と、脂質・代謝状態を単一細胞で結び付けて評価でき、細胞生物学における機能的多様性や微小環境依存性を解き明かすための有力なアプローチとなります。

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    法科学プロテオミクスのLCMS応用

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    今回紹介するのは、法科学領域におけるLC-MSベースのプロテオミクス応用を総覧したレビューです。タンパク質は安定で多様な試料に豊富に存在することから、個人識別の高度化や証拠解釈の精度向上に寄与します。本稿は、毛髪・骨・筋肉・血液・指紋などのヒト試料を対象に、民族・性別・生物学的年齢の推定、体液・組織のバイオマーカー同定、さらには死後経過時間(PMI)の推定まで、LC-MSを核としたタンデムMSやトップダウン/ミドルダウン/ボトムアップ解析の活用例を整理しています。また、違法ペプチド・タンパク質・ホルモンの検出によるアンチドーピング分野での有用性も強調されています。

    一方で、PMI推定は依然として議論が多く、手法改良が求められる課題と位置づけられます。著者らは、感度・特異性を高める質量分析アプローチとバイオマーカー駆動の分析戦略を俯瞰しつつ、再現性と法廷での受容性を確保するための検証・標準化の必要性を明確化。現状の方法論とヒト試料ベースの応用、今後の展望を包括的にまとめ、法科学捜査と研究者によるプロテオミクスの堅牢な導入を後押しする内容になっています。

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    胃癌唾液プロテオミクス生体指標探索

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    今回紹介するのは、唾液プロテオミクスを用いて胃がん(GC)の非侵襲バイオマーカーを探索した研究です。GC患者2群(n=12、n=13)と健常対照(n=11)の唾液を対象に、iTRAQによる網羅的定量解析を実施し、GO/KEGG解析やPPIネットワークで機能注釈を行いました。候補タンパク質は並列反応モニタリング(PRM)で検証し、予後との関連はKaplan–Meier生存解析で評価しています。

    解析の結果、ユニークペプチドを持つ671種のタンパク質を同定し、対照比で各GC群でそれぞれ124種、102種の有意な発現変動タンパク質(DEPs)を検出、両群に共通する56種(上昇24、低下32)を抽出しました。機能的な濃縮解析とPRM検証からS100A8、S100A9、CST4、CST5の4種が一貫して差異を示し、特にCST4とCST5は唾液で低下する一方、GC組織や血液では上昇している点が示されました。これらの所見は、唾液由来のS100A8/S100A9/CST4/CST5がGC検出の非侵襲バイオマーカー候補となり得ることを示すとともに、唾液・組織・血液間の発現差を照合する重要性を強調しています。

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    FFPE組織単一細胞小器官空間プロテオミクス

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    今回紹介するのは、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)組織から単一細胞やオルガネラのレベルで空間的なタンパク質解析を可能にする「Filter-aided expansion proteomics」という手法です。タイトルが示すように、本手法はフィルター支援型のプロセスと“expansion”の概念を組み合わせ、組織中の微小領域を対象に空間情報を保持したままプロテオミクス解析へと橋渡しするワークフローを構築しています。FFPEという臨床現場で一般的な試料形式に対応している点が大きな特徴です。

    本研究では、このアプローチを用いてFFPE組織内の単一細胞およびオルガネラ領域の空間解析を実現し、サブセルラー・スケールでのプロテオーム情報取得の実用性を示しています。これにより、アーカイブ化された臨床検体からでも、細胞内コンパートメントの違いを反映したタンパク質プロファイルを読み解く道が開かれ、病理学的評価やトランスレーショナルリサーチにおける空間プロテオミクスの適用範囲を広げる意義が示唆されます。

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    血漿プロテオミクス副甲状腺癌術前診断候補生体指標

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    今回紹介するのは、副甲状腺癌の術前診断に資する血液バイオマーカーを、プラズマプロテオミクスで探索した研究です。著者らはプラズマ中のタンパク質プロファイルを網羅的に解析し、副甲状腺癌とその他の状態を識別しうる差次的な変動タンパク質を抽出、術前段階での診断を補助し得る候補群を提示しています。

    得られたバイオマーカー候補は、侵襲性の低い血液検査として臨床ワークフローに組み込める可能性があり、術式や治療方針の決定を支える手掛かりとなり得ます。今後は独立コホートでの再現性検証と、実地臨床での性能評価が鍵となりそうです。

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    メタプロテオミクスペプチド同定向上

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    今回紹介するのは、メタプロテオミクスのペプチド同定を底上げする深層学習ベースのPSMフィルタリング手法「WinnowNet」です。メタゲノム由来の巨大かつ不完全なタンパク質データベースを用いるメタプロテオミクスでは、膨大な候補配列によりPSMフィルタリングが計算的ボトルネックになりやすいという課題があります。WinnowNetはこの難題に対し、PSMの「順序を持たない」性質を考慮して設計されたトランスフォーマー版とCNN版の2系統を用意し、簡単な例から難しい例へ段階的に学習させるカリキュラムラーニングを採用。検索後のPSMを学習的にふるい分けることで、同定感度の向上と信頼性の維持を両立します。

    主な結果として、同一のFDR水準で真の同定数を一貫して増やし、Percolator、MS2Rescore、DeepFilterといった先行ツールや一般的な解析パイプラインに組み込まれたフィルタより良好な性能を多様なデータセットで示しました。さらに、腸内マイクロバイオームにおいて食事や健康に関連するバイオマーカーの検出数を増やすことができ、微生物群集機能の解像度向上やパーソナライズド 医療への応用可能性を後押しします。今回の成果は、メタプロテオミクスにおけるPSM選別の効率と精度を同時に引き上げる有望なアプローチであることを示しています。

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