今回紹介するのは、高血圧ラットに内皮障害を加えて血管性認知障害(VCI)を誘発し、メタボロミクスとプロテオミクスを統合して分子機序を探った研究です。SPF由来のSHRの総頸動脈内皮を微小電流で損傷してモデル群を作製し、同系統のSHR偽手術群およびWKY偽手術群(各n=10)を設けました。行動学的にはモリス水迷路に加えPNT、SPTを実施し、脳組織はTMT定量プロテオミクスと液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)で網羅的に解析しています。
結果として、モリス水迷路ではDay1–5にWKY群と比べモデル群・SHR群で潜時短縮と平均遊泳速度低下(P<0.01)がみられ、Day6の探索試験ではモデル群でプラットフォーム通過回数、標的象限滞在時間、同距離が有意に低下(各P<0.05)しました。病理ではSHR群・モデル群の海馬でグリア・ニューロン数の減少、細胞体配列の疎化、ニッスル染色の淡化が認められ、モデル群では顆粒状から粉末状への変化、核濃縮、浮腫や壊死が観察されました。メタボロミクスではモデル群とWKY群の間で437種の有意な差異代謝物が同定され、TMT-LC-MS/MSによりタンパク質の差異も評価されています。これらは、高血圧背景に内皮障害が加わることで海馬障害と認知機能低下が生じること、ならびに多層オミクスによりVCIに関わる代謝経路・候補分子の同定が進む可能性を示しています。なお、MS機種名やLCメソッド、Evosep使用の有無は抄録からは特定できません。





