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    血漿プロテオミクスの現状

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    今回紹介するのは、プラズマプロテオミクスの現状とその技術革新、さらにはバイオマーカー発見に関する研究です。プラズマは健康や病気を反映する多様なバイオ分子、特にタンパク質の豊富な供給源であり、これらのタンパク質はバイオマーカーとしての可能性を秘めています。著者たちは、異なるアフィニティベースおよび質量分析法を用いた8つのプラットフォームを比較し、13,000以上のタンパク質にわたるパフォーマンスを評価しました。この研究により、各プラットフォームのカバレッジの違いや補完的な強みが明らかになり、バイオマーカー発見や臨床応用における重要な示唆が得られました。

    研究の結果、プラズマプロテオミクスのプラットフォーム間でのカバレッジのトレードオフが明らかになり、これが新たな診断法や治療法の開発に寄与することが期待されます。特に、これらのプラットフォームを同じコホートに適用することで、技術的評価と生物学的洞察を提供し、研究者にとって貴重なリソースとなることが示されました。プラズマプロテオームプロファイリングは、バイオマーカー発見において有望な手段として急速に発展していますが、包括的なプラットフォーム比較は依然として不足しているため、この研究はそのギャップを埋める重要な一歩となるでしょう。

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    ディーゼル微粒子のプロテオミクス変化

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    今回紹介するのは、ディーゼル微粒子(DPM)が人間のさまざまな組織由来の一次細胞から作成された三次元スフェロイドに与える影響を調査した研究です。この研究では、8種類のヒト一次細胞から得られたスフェロイドを標準化されたDPM(SRM 2975)に曝露し、その生存率を測定した後、タンデムマスダグ(TMT)ラベリングを用いた液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によるプロテオミクス解析を行いました。結果として、9,707種類のタンパク質が同定され、その中で128種類がDPM曝露に対して有意な変化を示しました。

    特に、アポリポタンパク質A-I(APOA1)は高濃度のDPMにおいて顕著に増加し、36種類のリボソームタンパク質は低濃度でも減少が見られました。経路解析により、急性期反応シグナル伝達や肝臓X受容体/レチノイドX受容体(LXR/RXR)、ファルネソイドX受容体(FXR)経路が活性化されることが示されました。この研究は、DPMによる全身的な毒性の理解を深め、曝露レベルや健康リスクを評価するための潜在的なバイオマーカーの同定に寄与する重要な知見を提供しています。

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    miR-423-5pによる代謝調節

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    今回紹介するのは、肝細胞癌(HCC)の代謝におけるmiR-423-5pの役割を明らかにするために行われたプロテオミクス研究です。HCCは診断および治療の選択肢が限られているため、重要な臨床課題となっています。研究では、miR-423-5pを安定的に過剰発現させたHCC細胞株を用い、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/M)によって全タンパク質を解析しました。その結果、698の差次的発現タンパク質(DEP)が同定され、特にプリンおよびピリミジン代謝、グルコネオジェネシスに関連する代謝経路が有意に豊富であることが示されました。

    さらに、bioinformatics解析を通じて、miR-423-5pの直接的なターゲットとして43のDEPが特定され、その中の7つのタンパク質がTCGA-LIHCコホートにおいて患者の予後と有意に関連していることが確認されました。これらのタンパク質は、miR-423-5p過剰発現細胞ではダウンレギュレーションされている一方で、進行したHCC組織ではアップレギュレーションされており、miR-423-5pがHCCの進行において重要な調節因子であることを示唆しています。

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    炎症性腸疾患のバイオマーカー解析

    今回紹介するのは、炎症性腸疾患(IBD)患者を対象にしたマルチプレックス健康監視パネルの開発と臨床評価に関する研究です。この研究では、Stellar質量分析装置を用いた超高スループットのパラレルリアクションモニタリング(PRM)法を採用し、57種類の血漿タンパク質を定量化しました。特に、24種類のFDA承認バイオマーカーを含むこのアッセイは、1日あたり最大300サンプルの処理能力を持ち、最終的には180サンプルのスループットで493件のIBDサンプルと509件の対照サンプルを分析しました。

    研究の結果、PRMアッセイは高い定量性を示し、直線性、感度、再現性に優れたデータを提供しました。また、最近の発見実験で特定されたIBDの候補マーカーであるC反応性タンパク質とオロソムコイドタンパク質の検証も行われました。このように、技術的な最適化を経て、臨床的なバイオマーカーの翻訳に向けた新たな道を開く成果が得られました。

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    頭頸部癌の治療予測におけるプロテオミクス

    最新誌に「Integrating MALDI-MSI-Based Spatial Proteomics and Machine Learning to Predict Chemoradiotherapy Outcomes in Head and Neck Cancer」が報告されました。頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、しばしば進行した段階で診断され、その内部の異質性が高いため、信頼できるリスク層別化や治療反応の予測が困難です。本研究では、HPV陰性の進行ステージHNSCC患者における5-フルオロウラシル/プラチナ系化学放射線療法(CDDP-CRT)の治療結果に関連するペプチドシグネチャーを特定することを目的としています。

    研究では、31人の治療未経験のHPV陰性HNSCC患者から得られたホール腫瘍切片をフォルマリン固定し、パラフィン包埋後にトリプシンで現場消化し、生成されたペプチドをマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析イメージング(MALDI-MSI)を用いて分析しました。臨床フォローアップの結果、20人の患者に再発または進行(RecPro)が見られ、11人は病気の証拠がありませんでした。ペプチドプロファイルに基づいて分類モデルが開発され、無制限および特徴制限アプローチが用いられました。無制限モデルは患者レベルで71%のバランス精度を達成し、特徴制限モデルは72%のバランス精度を示しましたが、特異度は92%に向上しました。これらの結果は、MALDI-MSIに基づくプロテオミクスプロファイリングがCDDP-CRT後の再発リスクが高い患者を特定する可能性を示しています。

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    乳がんにおけるEMTバイオマーカーの新手法

    最新誌に「Innovative Approaches to EMT-Related Biomarker Identification in Breast Cancer: Multi-Omics and Machine Learning Methods」が報告されました。乳がんは女性に最も多く見られるがんであり、その多様なサブタイプやステージのために診断や治療が困難です。精密医療は、新しい臨床バイオマーカーを特定することで早期発見、予後、治療計画の改善を目指しています。

    このレビューでは、上皮-間葉転換(EMT)に関連する新しいバイオマーカーを特定するために、最先端技術と人工知能(AI)の重要性が強調されています。EMTの過程では、上皮細胞が間葉状態に変化し、これはがんの進行を促進する遺伝的およびエピジェネティックな変化によって駆動されます。多オミクスデータに適用された統計解析や機械学習手法が新たなEMT関連バイオマーカーの発見を促進し、治療戦略の進展に寄与することが論じられています。この結論は、乳がんに関する多くの臨床および前臨床研究によって支持されています。

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    高悪性度卵巣癌のプロテオミクス解析

    最新誌に「Proteomics profiling for the global and acetylated proteins of High-Grade Serous Ovarian Carcinoma」が報告されました。高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)は予後が悪い主要な卵巣癌の一種であり、プロテオミクスはHGSOCの理解に広く用いられていますが、アセチル化タンパク質の全体像は未だ不明です。この研究は、HGSOCの発癌メカニズムの理解や有用なバイオマーカーの同定に寄与することを目的としています。

    研究では、病理学的に診断されたHGSOCの女性患者6名から得た混合抽出物を用い、timsTOF質量分析計を用いて全タンパク質およびアセチル化タンパク質の解析を行いました。解析の結果、腫瘍組織から356種類の差次的発現タンパク質(DEP)が同定され、そのうち124種類が上方制御、232種類が下方制御されていました。また、アセチル化タンパク質においては57種類の差次的発現アセチル化タンパク質(DEAP)が確認され、29種類が上方制御、2種類が下方制御されていました。これらの差次的発現タンパク質は主に代謝経路に関連しており、腫瘍において上方制御されていることが示されました。この研究は、全体的なタンパク質オミクスとアセチル化タンパク質オミクスを統合することで、HGSOCの発癌に対する新たな視点を提供し、診断バイオマーカー選定の新たな方向性を示すものです。

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    尿中バイオマーカーによる腎疾患診断

    最新誌に「Preliminary screening of urinary host protein biomarkers for Schistosomiasis haematobium: A proteome profiling study identifying candidate diagnostic targets in school-aged children」が報告されました。シュistosomiasisは重大な公衆衛生上の課題であり、特にアフリカ諸国において、尿生殖器型の原因となるSchistosoma haematobiumは学校年齢の子供たちに最も影響を与えています。従来の診断法は尿中の寄生虫卵を顕微鏡で確認するものであり、労力がかかり、専門的な技術を要し、特に軽度の感染に対して感度が低いという課題があります。

    この研究では、ザンジバルから7〜15歳の135人の子供を対象に、データ独立取得(DIA)プロテオミクスと機械学習を組み合わせて、Schistosoma haematobiumに感染した個体の尿サンプルからホストタンパク質バイオマーカーを特定しました。プロテオミクス分析により、感染群の尿サンプルから823種類の共通ホストタンパク質が同定され、機械学習アルゴリズムによってSYNPO2、CD276、α2M、LCAT、hnRNPMが最も識別力のあるバイオマーカーとして強調されました。これらのタンパク質の差異表現傾向は酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって確認され、特にLCATとα2Mは診断の可能性を示しました。この研究は、Schistosoma haematobium感染に関連する重要な尿中タンパク質バイオマーカーを特定し、ホストと寄生虫の相互作用に関する新たな洞察を提供するとともに、非侵襲的な診断ツールの可能性を示しています。

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    涙液プロテオミクスによるバイオマーカー発見

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    最新誌に「High throughput tear proteomics with data independent acquisition enables biomarker discovery in allergic conditions」が報告されました。この研究は、健康状態を反映する病理的バイオマーカーの探索において、涙液が有望な生体液であることを示しています。涙液は非侵襲的に採取可能であり、環境要因にさらされるため、アレルギー反応を敏感に反映するタンパク質が濃縮されやすい特性があります。しかし、涙液はこれまで十分に研究されておらず、重要な研究機会を提供しています。

    本研究では、健康な個体とアレルギー患者からシュルマー試験を用いて涙サンプルを収集し、データ独立型取得(DIA)戦略を用いた高スループットプロテオミクスを組み合わせた最適化されたワークフローを採用しました。このアプローチにより、2542種類のタンパク質を同定し、2つのグループの成功した区別を実現しました。また、99種類の差次的に発現するタンパク質を特定しました。この結果は、涙液におけるタンパク質分析の実現可能性を示し、健康状態を検出するための非常に感度の高い液体としての涙の重要性を強調しています。データはProteomeXchangeにて、識別子PXD067099で利用可能です。

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    妊娠損失の新たなバイオマーカー

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    最新誌に「Novel proteomics biomarkers of recurrent pregnancy loss reflect the dysregulation of immune interactions at the maternal-fetal interface」が報告されました。この研究は、流産が妊娠の50-70%に影響を及ぼし、臨床的に認識された妊娠の15-20%に関与していることを背景に、特に再発性流産(RPL)の原因と分子経路が十分に理解されていない現状を踏まえています。信頼できる診断および予防方法が未だ確立されていない中、次世代プロテオミクス技術を用いてRPLの新しいバイオマーカーを発見し、早期かつ効果的な診断ツールの開発を目指しました。

    研究では、妊娠6〜13週のRPLを持つ女性(n=11)と選択的妊娠中絶を受けた対照群(n=11)から血液サンプルを収集しました。14種類の高濃度タンパク質を免疫除去した後、プラズマサンプルは還元、アルキル化、トリプシン消化され、ナノフロー逆相クロマトグラフィーを用いてペプチドの分離が行われました。その後、Q Exactive質量分析計を使用して質量分析が実施され、差次的に豊富なタンパク質が特定されました。最終的に651種類のタンパク質が同定され、RPLにおいては50種類の差次的に豊富なタンパク質が見つかり、特にCGBとPAPPAの2つのバイオマーカー候補が免疫測定法で検証されました。この研究は、妊娠中の免疫相互作用の調節異常を反映した新たなバイオマーカーの可能性を示唆しており、今後の診断法の発展に寄与する意義があります。

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